酸蝕歯
皆さん、こんにちわ。
五十嵐歯科医院の山中です。
皆さんは酸蝕症(さんしょくしょう、英: erosion)についてごぞんじでしょうか?酸蝕症は歯の硬組織、特にエナメル質が種々の要因によって侵蝕されることです。今、う蝕、歯周病に続く第3の歯科疾患と言われるようになっています。その原因としては、古くからはメッキ工場やガラス細工工場などにおいて酸性のガスに曝露、吸引するような産業性のものと言われてきました。歯科医師国家試験問題では定番の問題でした。
近年では生活習慣病の一つととらえられ、現在は、「楔状欠損(Wedge-shaped defect)」の要因の一つであると考えられています。その生活習慣とは1、清涼飲料水、スポーツドリンク、ワイン、一部の果汁、ハーブティー、酢などの食品の摂り過ぎによるもの。
2、逆流性食道炎、拒食症など、胃酸によるもの(前歯の裏側の浸食)。
3、 ビタミン剤やアスピリンといった酸性の薬剤によるものなどです。
好発部位としては上下顎の全歯です。形態としては、浅くU字型となっており、エナメル質表面が滑らかで光沢があるために、病状が進行しないと気付かないことも多く、酸の作用によって脱灰される現象であるが、細菌が関与していないという点でう蝕と異なっています。症状が進行すると冷たいものが歯にしみる知覚過敏や虫歯のような痛みを引き起します。
2011年の東京医科歯科大学う蝕制御学講座の研究データでは、歯が侵食するといわれる市販の飲料120種のpH値を測定したところ、実に73%の製品がpH5.5以下でした。調味料や柑橘類の調査でも多くがエナメル質を溶かすpH値を示しました。例としてコーラ飲料はpH2.2で胃酸の数値(pH1~2)に近く(レモンのpHは2.1)、栄養ドリンクは2.5、黒酢飲料は3.1、スポーツドリンクは3.5でした。原因となるものの摂取量の減少のほかに原因となる飲料・食品などを長時間口の中に入れず、摂取後は水やお茶ですすぎ洗いし、歯磨きを励行する。
現段階での酸蝕症の臨床対応は、下記の2段階に分けられます。審美的または機能的な損害や不快症状を伴わない場合には、フッ化物配合歯磨剤などを用いた予防処置または経過観察を行います。フッ化物配合歯磨剤は、日々活用し続けることでエナメル質表層部における耐酸性の向上が期待できます。後はデンタルガムを噛んで唾液の分泌を促進し唾液の緩衝能で中和する方法も期待できます。一方、実質欠損を伴う病的な症状が生じた場合には、臨床的介入が必要となります。小さな酸蝕症は接着性コンポジットレジンを用いた最小限の切削介入、大きな酸蝕症は、冠による修復処置対応を行います。
皆さんも歯の健康のため、食べ物の取り方についても考えてください。
2015年1月17日 7:59 AM カテゴリー: 未分類